“チコちゃん”と共演した 奥田昌子さんが教えてくれた『長寿になる和食道』
食の歴史から健康と食の教訓を見直す
■「腹八分目」こそ“食養生”の鍵
日本の食養生のもうひとつの特徴が「腹八分目」です。薬食同源という言葉をご存じでしょうか。「体によい食材を日常的に食べて、健康でいれば薬は必要ない」という意味で、東洋で広く受け入れられています。けれども、健康に役立つものをどんどん食べればよいかというと、そういうわけではないのです。益軒は『養生訓』で、「体によいといわれるものでも腹八分目にすべきだ」と繰り返し強調しています。
確かに、どんな食材でも食べ過ぎれば体の負担になり、余分な脂肪が付いてしまいます。個々の食材にだけ目を向けると栄養全体のバランスを見失う恐れもあるでしょう。食事全体、体全体を大きくとらえて、丸ごとバランスを整えることが本当の薬食同源であり、食養生の鍵といえます。
■食養生の知恵と教訓を
現代の日本は世界有数の医療水準を誇り、誰もが必要な医療を受けられる体制が整っています。しかし、医療が充実するにつれて明らかになったのは、健康で長寿を楽しむには、薬を飲んだり、手術を受けたりするだけではまったく不十分だということでした。
なぜなら、病気のかかりやすさは生活習慣によってかなりの部分が決まるからです。最近行われた大規模な調査から、寿命のうち遺伝によって決まるのは16パーセントしかないことが明らかになっています。残りの84パーセントを生活習慣と環境が決めるとなれば、食生活や心のありようを含む生活習慣を正さない限り、病気を取り除くことは不可能でしょう。
医学の発展にともなって日本人の平均寿命が一気に伸びたのも、高い健康意識に支えられ、連綿と受け継がれた養生の知恵のおかげと考えられます。今の時代にこそ、歴史に埋もれた健康と食の教訓を見直すことで多くのヒントを得られるのではないか。そんな気持ちから執筆したのが『日本人の病気と食の歴史 ~長寿大国が歩んだ苦難の道』です。
といっても小難しい話ではありません。日本人の病気と食をめぐる1万年の歴史には日本史のトリビアが満載です。歴史好きな人はもちろん、これまで歴史にあまり触れてこなかった人にも、楽しく、面白く読んでいただけると思います。
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KEYWORDS:
『日本人の病気と食の歴史』
著者/奥田 昌子
本書を読むだけで健康になる! 長生きできる習慣と秘訣が身につく!
「日本人の体質」を科学的に説き、「正しい健康法」を提唱している奥田昌子医師。メディア出演で人気に!今もっとも注目される内科医にして著述家である。
日本人誕生から今日までの「食と生活と病気」の歴史を振り返り、日本人の体質に合った正しい「食と健康の奥義」を解き明かす。壮大な「食と健康」の歴史を学べる教養大河ロマンでもある。
◆なぜ日本人は長寿になったのか」
◆日本人はどんな病気になり、何を食べてきたか
◆けっして忘れてはならない「養生の知恵」とは
日本人の体質、病気、食べ物、食事法、習慣、気候、風土……
日本人を長寿にした「和食道」1万年の旅
「医学が進歩するにつれて明らかになったのは、病気を遠ざけ、長寿を楽しむには、薬を飲んだり、手術を受けたりするだけではとうてい足りないということでした。
食生活や心のありようを含む生活習慣を正さない限り、病気の根は残ります。
なぜでしょうか。
それは、体質や病気のかかりやすさは、生活習慣によってかなりの部分が決まるからです。食生活次第で体は良いほうにも悪いほうにも変わります。食べものをうまく選び、生活習慣を整えるのが大切なのはそのためです。健康に良いイメージのある和食も、はじめから健康に良かったわけではないのです。
日本人は自分たちの体で効果を確かめながら、長い歳月をかけて和食をより良いものにしてきました。体と食のかかわり合いの歴史を調べることで、私たちは多くのことを学べるはずです。
私は医師として、日本人の体質を踏まえた予防医療を考えてきました。その立場から、日本人の病気と食の歴史をたどり、忘れてはならない教訓や、今の時代に生かすべきヒントを引き出したのが本書です。————「はじめに」より抜粋
《目次》
第1章医術もまじないも「科学」だった~縄文時代から平安時代まで
第2章食べて健康になる思想の広がり~鎌倉時代から安土桃山時代まで1
第3章天下取りの鍵は健康長寿~鎌倉時代から安土桃山時代まで2
第4章太平の世に食養生が花開く~江戸時代
第5章和食を科学する時代が始まった~明治時代、大正時代
第6章和食の〝改善〟が新しい病気をもたらした~昭和時代から現代まで